デュアルSIMの基本, なぜ海外旅行で便利なのか
現代のiPhone、特にiPhone XS以降のモデル(そして北米版ではiPhone 14以降は物理SIMスロットなし)は、デュアルSIM機能を標準で備えています。これは、物理的なSIMカードとeSIM(組み込み型SIM)を同時に利用できるというものです。私のような通信技術者にとって、この機能はただの便利さを超え、ネットワークの柔軟性を飛躍的に高めるものです。
海外旅行におけるデュアルSIMの最大の利点は、日本の電話番号を維持しつつ、現地のデータ通信を安価に確保できる点にあります。例えば、日本からの重要な電話やSMS(ショートメッセージサービス)を逃すことなく、現地では高速かつ安定したデータ通信を享受できるのです。これは、かつて海外用Wi-Fiルーターを持ち歩いたり、高額な国際ローミング料金を支払ったりしていた時代からは考えられない進化です。
この機能がなければ、現地でSIMを入れ替えるたびに日本の番号が一時的に使えなくなり、特に二段階認証や銀行からの通知といった、現代のデジタルライフに不可欠なサービスが利用できなくなるリスクがありました。デュアルSIMは、この問題をスマートに解決します。
デュアルSIMの種類と機能
iPhoneのデュアルSIMは、主に以下の2つの構成で利用されます。
- 物理SIM + eSIM: 大多数のグローバルモデルiPhoneに採用されている方式です。日本のキャリアの物理SIMを挿入し、海外のeSIMをダウンロードして利用します。
- eSIM + eSIM: iPhone 14以降の北米モデルや、将来的には他の地域でも普及が予想される完全eSIMモデルで利用される方式です。物理SIMスロットが存在しないため、複数のeSIMプロファイルを切り替えて利用します。
それぞれのSIMに「主回線」「副回線」といったラベルを割り当て、音声通話とデータ通信で異なる回線を利用するように設定できます。データ通信は海外eSIM、音声通話は日本の物理SIM(着信のみ)といった使い分けが一般的です。
ローミングとの違い, メリットとデメリット
デュアルSIMと混同されがちなのが「国際ローミング」です。国際ローミングは、日本のキャリアと提携している海外のキャリアのネットワークを間借りして通信するサービスです。設定は簡単ですが、通信料金が高額になりがちで、通信速度も現地の優先度が低い場合があります。
| 比較項目 | デュアルSIM (eSIM利用) | 国際ローミング |
|---|---|---|
| データ料金 | 現地料金体系, 非常に安価 | 高額, 定額プランでも制限あり |
| 音声通話 | 現地番号(必要なら取得)または日本の番号での着信 | 日本の番号で発着信可能(高額) |
| 設定の複雑さ | 初期設定はやや手間(QRコードなど) | 設定は比較的簡単(オンにするだけ) |
| 通信速度 | 現地キャリアと同等, 高速が期待できる | 現地キャリアの優先度が低い場合あり |
| ネットワーク選択 | 現地キャリアを自分で選べる | 提携先キャリアに限定される |
| SIMカード | 物理SIMとeSIMを併用 | 日本の物理SIMのみ |
このように、デュアルSIM、特にeSIMを活用することで、コストパフォーマンスと通信品質の両面で大きなメリットが得られます。例えば、ドコモeSIMとCellesimを海外で比較すると、データ料金の差は歴然です。
eSIMと物理SIMの最適な組み合わせ方
デュアルSIMの真価は、その組み合わせ方と設定にあります。私の経験上、多くの旅行者が陥りがちなのが「データ通信も音声通話も日本のSIMに頼りきり」という状態です。これではせっかくのデュアルSIM機能が活かせません。最適な組み合わせを理解し、設定を適切に行うことが肝要です。
日本のSIMを「着信用」にする方法
これは基本中の基本です。日本の物理SIM(または主回線eSIM)は、電話とSMSの受信用にのみ機能させ、データ通信は海外eSIMに任せます。これにより、高額な国際データローミング料金を回避しつつ、日本からの重要な連絡を逃しません。具体的には、iPhoneの設定で「モバイルデータ通信」を海外eSIMに、「デフォルトの音声回線」を日本のSIMに設定します。
ただし、注意したいのは、着信を受けること自体には費用がかからないものの、日本のSIMで発信したり、SMSの国際送信を行ったりすると、料金が発生する点です(日本のキャリアの国際通話料金が適用されます)。あくまで「受信用」と割り切るのが賢明です。
海外eSIMをデータ通信専用にする
海外eSIMは、現地の高速データ通信を担う「主役」です。例えば、ソウルでの3泊4日の家族旅行であれば、韓国eSIMでデータ無制限プランを選ぶと、地図アプリやSNS、動画視聴なども安心して楽しめます。データ通信専用にすることで、日本のSIMカードにかかる余計な負荷を減らし、バッテリー消費も抑えられます。
海外eSIMを選ぶ際は、滞在先の主要都市でのネットワークカバレッジ、提供されるバンド(周波数帯)、そして何よりも実測速度のデータを確認することが重要です。例えば、パリであればOrange FranceがBand 3 (1800MHz), Band 7 (2600MHz), Band 20 (800MHz)で広範囲をカバーし、平均ダウンロード速度は80-150 Mbps、アップロード速度は15-30 Mbps程度が期待できます。一方、一部のMVNOが提供するeSIMは、主要キャリアのサブバンドや古いインフラを使用している場合があり、速度が大きく落ち込む可能性もあります。
海外eSIMの購入と初期確認
eSIMの購入は非常に手軽になりました。オンラインで数分あれば購入から設定まで完了し、空港での長蛇の列に並ぶ必要もありません。この手軽さが、出発直前の旅行者にとって大きな魅力です。実際、夏休み海外旅行の出発直前でもeSIMは間に合います。
信頼できるeSIMプロバイダの選び方
eSIMプロバイダは多数存在しますが、信頼性とサポート体制を重視すべきです。私がCellesimを推奨する理由は、そのシンプルで分かりやすい料金体系と、多言語対応のサポートが充実しているからです。特にトラブル発生時には、迅速なサポートが不可欠になります。
プロバイダを選ぶ際には、以下の点をチェックしてください。
- 対象国のキャリア: どの現地のキャリアのネットワークを利用できるのか。主要キャリア(例: 米国ならAT&T, T-Mobile; 台湾ならChunghwa Telecom, Far EasTone)と直接提携しているか確認しましょう。
- データ容量と有効期間: 自分の旅行期間とデータ使用量に合ったプランを選びます。データ無制限プランは魅力的ですが、Fair Usage Policy(FUP)による速度制限がある場合があるので、規約をよく読みましょう。
- VoLTE/VoWiFi対応: 現地のキャリアがVoLTEやVoWiFiをサポートしているか、eSIMプロファイルがそれに対応しているか。これがないと、データ通信はできても音声通話が不安定になることがあります。
- カスタマーサポート: 24時間体制で、迅速に問題解決に対応してくれるか。日本語サポートがあるとなお良いでしょう。
購入後のチェックポイント
eSIMを購入したら、以下の点を事前に確認しておきましょう。
- eSIMプロファイルのダウンロード方法: QRコードスキャン、手動入力、またはアプリ経由など、プロバイダによって異なります。事前に手順を確認し、できれば出発前に日本のWi-Fi環境下でダウンロードを試みてください。
- アクティベーション条件: 購入後すぐにアクティベーションが必要な場合や、現地到着後にネットワークに接続した時点で自動的にアクティベートされる場合など、プロバイダによって異なります。特に「有効期間は購入時ではなくアクティベーションからカウント」という条件が多いので、注意が必要です。
- APN設定情報: ほとんどのeSIMはAPN設定が自動で行われますが、稀に手動設定が必要な場合があります。その際は、プロバイダから提供されるAPN情報を控えておきましょう。例えば、一部のMVNO eSIMでは、"internet"ではなく"data.mvno.jp"のような固有のAPNが必要となることがあります。
iPhoneでデュアルSIMを設定する, ステップバイステップ
eSIMの導入は、一度慣れてしまえば非常に簡単です。以下の手順で進めれば、誰でもスムーズに設定できるはずです。今回は、日本の物理SIM(または主回線eSIM)が既にiPhoneに設定されている前提で説明します。
eSIMプロファイルの追加
- 設定アプリを開く: iPhoneのホーム画面から「設定」アプリをタップします。
- 「モバイル通信」を選択: 設定メニューの中から「モバイル通信」をタップします。
- 「eSIMを追加」をタップ: 「モバイル通信プランを追加」または「eSIMを追加」をタップします。
- QRコードをスキャンまたは手動入力: プロバイダから提供されたeSIMのQRコードをカメラでスキャンします。もしQRコードがない場合やスキャンできない場合は、「詳細情報を手動で入力」を選択し、SM-DP+アドレスとアクティベーションコードを入力します。
- eSIMの名前を設定: 追加されたeSIMに「旅行用」「海外データ」など、分かりやすい名前を付けます。これがデュアルSIMを管理する上で非常に重要になります。
- 設定完了: プロファイルがダウンロードされれば、eSIMの追加は完了です。
データ通信と通話の選択
iPhoneでのeSIM切り替えガイドでも触れましたが、ここでは海外旅行に特化した設定です。
- データ通信用回線の設定: 「モバイル通信」画面に戻り、「モバイルデータ通信」をタップします。ここで、追加した海外eSIM(例: 「旅行用」)を選択します。
- デフォルトの音声回線の設定: 「デフォルトの音声回線」をタップし、日本のSIM(例: 「主回線」または「個人用」)を選択します。これで、日本の番号での着信が可能になります。
- iMessageとFaceTimeの設定: 必要に応じて、iMessageとFaceTimeでどの電話番号を使用するかを選択します。通常は日本の電話番号のままにしておくのが良いでしょう。
これで基本的なデュアルSIMの設定は完了です。機内モードを解除し、現地の電波を掴めば、海外eSIM経由でデータ通信が開始されます。
データローミングと通信量の賢い管理術
デュアルSIMを導入しても、設定を誤ると意図せず高額なローミング料金が発生したり、データ容量を使い切ってしまったりすることがあります。賢い管理術を身につけましょう。
データローミングの完全オフと注意点
海外eSIMをデータ通信用にする場合、日本のSIMカードのデータローミングは必ずオフにしてください。これは非常に重要です。
- 日本のSIMのデータローミングをオフにする: 「設定」>「モバイル通信」>「(日本のSIMの名前)」>「データローミング」をオフにします。
- 海外eSIMのデータローミングをオンにする: 追加した海外eSIM(例: 「旅行用」)では、「データローミング」がオンになっていることを確認します。これがオンになっていないと、データ通信ができません。
ここで重要なのは、iPhoneの「モバイルデータ通信のオプション」にある「データローミング」設定です。これがオフになっていると、どのSIMでもデータローミングができなくなります。デュアルSIM運用では、日本のSIM側のデータローミングを個別にオフにし、海外eSIM側はオンにする、という意識が大切です。少しややこしいですが、この違いを理解することがトラブル回避に繋がります。
通信量のモニタリングと超過対策
eSIMプランのデータ容量は限られていることが多いため、通信量のモニタリングは必須です。
- iPhoneの機能で確認: 「設定」>「モバイル通信」で、各SIMの「現在の期間」のデータ使用量を確認できます。ただし、これはiPhoneが記録したおおよその値であり、キャリアの表示とは異なる場合があります。
- eSIMプロバイダのアプリ/ウェブサイトで確認: 最も正確なデータ使用量は、eSIMプロバイダが提供する専用アプリやウェブサイトのマイページで確認できます。
通信量超過を避けるためには、以下の対策が有効です。
- Wi-Fiの積極的な利用: ホテルやカフェ、公共交通機関のWi-Fiを積極的に利用しましょう。日本の新幹線やJR線では無料Wi-Fiが普及していますが、海外の交通機関も同様です。
- 動画のオフラインダウンロード: NetflixやYouTube Premiumのオフラインダウンロード機能を使って、移動中に視聴するコンテンツは事前にダウンロードしておきましょう。
- バックグラウンド更新の制限: 「設定」>「一般」>「Appのバックグラウンド更新」で、海外eSIM使用中は不要なアプリのバックグラウンド更新をオフに設定します。
- 低データモードの活用: 「設定」>「モバイル通信」>「モバイルデータ通信のオプション」>「低データモード」をオンにすると、バックグラウンドでのネットワーク使用を一時停止し、データ消費を抑えられます。
VoLTE, VoWiFiの落とし穴と対処法
現代のモバイル通信において、音声通話の品質を大きく左右するのがVoLTE (Voice over LTE) とVoWiFi (Voice over Wi-Fi) です。これらを理解しておくことは、海外での通話品質を維持するために重要です。
VoLTE, VoWiFiの基礎
VoLTEは、音声通話をLTEデータネットワーク上で行う技術です。従来の3G回線を使った通話よりも高音質で、通話中のデータ通信も可能です。一方、VoWiFiはWi-Fiネットワーク経由で音声通話を行う技術で、電波の届きにくい場所や、海外から日本の電話番号で通話する際に非常に役立ちます。
しかし、海外eSIMを使用する際にVoLTE/VoWiFiが問題となることがあります。特に海外のMVNO(仮想移動体通信事業者)のeSIMは、VoLTEに対応していないケースが散見されます。この場合、LTEデータ通信はできても、通話時に2G/3Gにフォールバックしたり、全く通話できなかったりする可能性があります。
対策としては、eSIM購入前にプロバイダにVoLTE対応状況を確認することです。特にビジネスで電話会議が多い方や、現地の知人と頻繁に電話する予定がある方は、この点を軽視すべきではありません。
iPhone設定とキャリアの相性
iPhoneでは、VoLTEのオン/オフを直接設定する項目は通常ありません(キャリア側で有効になっていれば自動的に利用されます)。しかし、キャリアによっては「設定」>「モバイル通信」>「(SIMの名前)」>「通信のオプション」>「LTE回線を使用」で、VoLTEの挙動を選択できる場合があります(例: 「音声とデータ」「データのみ」)。
VoWiFiについては、「設定」>「モバイル通信」>「Wi-Fi通話」をオンにすることで利用できますが、これは日本のSIMがWi-Fi通話に対応している必要があります。海外eSIMでVoWiFiを利用できるかは、eSIMプロバイダと現地のキャリアの対応状況に依存します。例えば、韓国のSK TelecomやKTはVoLTEとVoWiFiに幅広く対応していますが、一部のプリペイドeSIMではVoLTEが提供されないことがあります。
日本の番号でVoWiFiを利用するメリットは大きく、海外のホテルやカフェのWi-Fiを使って、日本にいるときと同じように通話できる点です。国際電話料金を大幅に削減できるため、ぜひ活用したい機能です。
APN設定の最前線, iPhone特有の注意点
APN (Access Point Name) は、携帯電話がインターネットに接続するために必要な設定情報です。通常、eSIMを導入するとAPNは自動で設定されますが、稀に手動での調整が必要になることがあります。特に、MVNO系のeSIMや、特定の古いiPhoneモデルでは注意が必要です。
APNが必要になるケース
自動設定がうまくいかない場合、以下の状況でAPNの手動設定が必要になることがあります。
- データ通信ができない: eSIMは有効になっているのに、ブラウザが開けない、アプリが通信できない場合。
- プロバイダから手動設定を指示された: eSIM購入時にプロバイダからAPN情報を渡された場合。
- 一部の古いiPhoneモデル: 最新のiOSバージョンでも、ごく稀に特定のモデルで自動設定が機能しないことがあります。
iPhoneでのAPN設定は、「設定」>「モバイル通信」>「モバイルデータ通信ネットワーク」から行います。ここに表示される各項目に、eSIMプロバイダから指示された情報を入力します。例えば、APNが「internet」の場合もあれば、「plus.globe.com.ph」(フィリピンのGlobe Telecom)のように固有のアドレスの場合もあります。
特に、データ通信がうまくいかない場合、APNタイプを「default,supl」のようにカンマで区切って複数指定する必要があるケースもありますが、iPhoneのUIではそこまで詳細な設定はできません。もし手動でAPNを設定しても通信できない場合は、プロバイダのサポートに連絡し、より詳細なAPN設定情報(プロトコルや認証タイプなど)を確認する必要があります。これは稀なケースではありますが、私の経験上、一部のニッチなeSIMでは遭遇することがあります。
CGNAT, IPv6-onlyの注意点
最新のeSIMサービスの中には、IPv6-onlyのネットワークを提供しているものや、CGNAT (Carrier Grade Network Address Translation) を導入しているものがあります。
- IPv6-only: これはIPアドレス枯渇問題への対応策ですが、一部の古いアプリやサービスはIPv4にしか対応していないため、IPv6-onlyのネットワークでは利用できない可能性があります。ほとんどの主要アプリはIPv6に対応していますが、特定のビジネス向けVPNサービスや、ローカルネットワーク上のレガシーな機器にアクセスする際には注意が必要です。
- CGNAT: 複数のユーザーが単一のグローバルIPアドレスを共有する技術です。これによりIPアドレスの節約が可能になりますが、ポート転送が必要なサービス(P2P通信、特定のゲームなど)が利用できなかったり、サーバーとして機能するアプリ(VPNサーバーなど)が外部からアクセスできなくなったりする制約があります。旅行者にとってはほとんど影響ありませんが、技術的な背景として知っておくと良いでしょう。
これらの技術的な詳細は、多くの旅行者には直接関係ないかもしれませんが、もし特定のサービスが海外eSIM経由で利用できない場合は、CGNATやIPv6-onlyが原因である可能性も考慮に入れると、トラブルシューティングの幅が広がります。
現地キャリアの通信速度とバンド情報
海外eSIMを選ぶ上で、現地のキャリアがどの周波数帯(バンド)でサービスを提供しているか、そして実際の通信速度はどの程度かを知ることは非常に重要です。iPhoneは世界中の主要バンドに対応していますが、特定のバンドがサポートされていない地域では、最高のパフォーマンスが得られないこともあります。
主要国のキャリアとバンド情報
以下に、人気渡航先の一部と、そこで主要なキャリアが使用しているLTE/5Gのバンド情報をまとめました。これはあくまで一般的な情報であり、地域や時間帯によって速度は変動します。
| 国 | 主要キャリア | 主要バンド (LTE/5G) | 平均ダウンロード速度(目安) |
|---|---|---|---|
| 韓国 | SK Telecom, KT, LG U+ | LTE: B1, B3, B5, B7, B8, B28, B38 / 5G: n78, n77 | 80-200 Mbps (5Gでは300-600 Mbps) |
| 米国 | AT&T, T-Mobile, Verizon | LTE: B2, B4, B5, B12, B66, B71 / 5G: n5, n41, n71, n260, n261 | 50-150 Mbps (5Gでは200-500 Mbps) |
| 台湾 | Chunghwa Telecom, Far EasTone, Taiwan Mobile | LTE: B1, B3, B7, B8, B28 / 5G: n1, n3, n78 | 60-180 Mbps (5Gでは250-550 Mbps) |
| フランス | Orange, SFR, Bouygues Telecom | LTE: B3, B7, B20, B28 / 5G: n1, n3, n78 | 50-120 Mbps (5Gでは150-400 Mbps) |
| シンガポール | Singtel, StarHub, M1 | LTE: B1, B3, B7, B8, B28 / 5G: n1, n3, n78 | 70-200 Mbps (5Gでは300-700 Mbps) |
これらの情報から、例えば韓国の都市部では、SK Telecomのn78バンド(3.5GHz帯)に対応したeSIMを利用すれば、非常に高速な5G通信が期待できることが分かります。一方で、LTEのみのバンド(B5, B8など)を主に使用するeSIMでは、速度は控えめになる傾向があります。
キャリアアグリゲーションと実測値
キャリアアグリゲーション(CA)は、複数の周波数帯を束ねて通信速度を向上させる技術です。例えば、Band 1とBand 3を同時に利用することで、単一のバンドよりもはるかに高速な通信が可能になります。最新のiPhoneは高度なCAに対応していますが、現地のキャリアがどのような組み合わせでCAを提供しているかによって、実際の速度は大きく変わります。
海外eSIMを選ぶ際は、プロバイダがどの現地のキャリアと提携しているか、そしてそのキャリアが提供するCAの組み合わせを考慮すると良いでしょう。一般的に、主要キャリアのeSIMはCAを積極的に活用しており、高い実測値が期待できます。例えば、ソウルの江南エリアでは、SK Telecomの5Gネットワークで下り500Mbps、上り80Mbpsといった速度も珍しくありませんが、これは複数の5GバンドとLTEバンドを組み合わせたCAの恩恵です。
現地の通信速度は、利用する時間帯、場所(屋内か屋外か、地下鉄内かなど)、ネットワークの混雑状況によって大きく変動します。提示されている平均速度はあくまで目安であり、保証されたものではないことを理解しておくべきです。
トラブルシューティング, よくある問題と解決策
どんなに準備をしても、海外での通信トラブルは起こり得ます。しかし、その原因と対処法を知っていれば、冷静に対処できます。ここでは、私がよく遭遇するトラブルとその解決策を紹介します。
データ通信ができない
最も一般的なトラブルです。以下の点を順に確認してください。
- eSIMが有効になっているか: 「設定」>「モバイル通信」で、海外eSIMが「オン」になっているか確認します。
- モバイルデータ通信が海外eSIMに設定されているか: 「モバイルデータ通信」の項目が海外eSIMになっているか確認します。
- データローミングがオンになっているか: 海外eSIMの「データローミング」がオンになっているか確認します。日本のSIMのデータローミングはオフになっていることを再度確認してください。
- APN設定が正しいか: 必要に応じて、プロバイダから提供されたAPN情報を手動で入力します。
- ネットワーク選択: 自動でネットワークに接続できない場合、「設定」>「モバイル通信」>「(海外eSIMの名前)」>「ネットワーク選択」をタップし、「自動」をオフにして、手動で現地のキャリア(eSIMプロバイダが提携しているキャリア)を選択してみます。
- iPhoneの再起動: 基本ですが、トラブルの多くはこれで解決します。
- プロファイルの再インストール: 最終手段として、eSIMプロファイルを一度削除し、再度インストールし直すことも考えられます(ただし、プロバイダによっては再インストールに制限がある場合があるので、事前に確認が必要です)。
通話ができない、または不安定
通話に関する問題は、VoLTEやVoWiFiの対応状況が絡んでいることが多いです。
- VoLTE/VoWiFi対応状況の確認: eSIMプロバイダと現地のキャリアがVoLTE/VoWiFiに対応しているか再確認します。
- Wi-Fi通話の設定確認: 日本のSIMでVoWiFiを利用したい場合、「設定」>「モバイル通信」>「Wi-Fi通話」がオンになっているか確認します。
- 電波状況の確認: 3G/2Gの電波しか届いていない場所では、通話品質が低下したり、全く通話できなかったりすることがあります。移動して電波状況の良い場所で試してみてください。
- デフォルトの音声回線の確認: 「設定」>「モバイル通信」>「デフォルトの音声回線」が、着信を受けたい日本のSIMになっているか確認します。
これらのトラブルシューティングを試しても解決しない場合は、迷わずeSIMプロバイダのカスタマーサポートに連絡してください。彼らは詳細なログを確認し、具体的なアドバイスを提供してくれます。
速度と解像度の実際
通信速度の「速い」「遅い」は、主観的な感覚だけでなく、具体的な数値で捉えるべきです。そして、その速度が旅行体験にどのような「解像度」をもたらすのかを理解することが重要です。
アプリケーション別の必要速度
私のようなエンジニアは常に帯域とレイテンシを意識しますが、一般の旅行者には以下の目安が分かりやすいでしょう。
| 利用目的 | 必要となる平均ダウンロード速度(Mbps) | 備考 |
|---|---|---|
| メッセージアプリ (LINE, WhatsApp) | 1-5 | テキストのみなら1Mbps以下でも可 |
| 地図アプリ (Googleマップ, Appleマップ) | 5-10 | 経路検索、地図の読み込みに必要 |
| SNS (Instagram, X, TikTok) | 10-25 | 画像や短尺動画の読み込み |
| Webブラウジング | 10-20 | 写真が多いサイトや動画埋め込みサイト |
| 標準画質 (SD) 動画ストリーミング | 5-10 | YouTube (480p) など |
| 高画質 (HD) 動画ストリーミング | 25-40 | YouTube (1080p), Netflixなど |
| 4K動画ストリーミング | 50+ | 高負荷、データ消費も大きい |
| ビデオ通話 (Zoom, Google Meet) | 5-15 (双方向) | 安定性が重要、アップロード速度も影響 |
このように、多くの一般的な用途では、平均して20-30 Mbps程度の速度があれば十分に快適です。しかし、4K動画のストリーミングや大容量ファイルのダウンロードなど、より高解像度な体験を求めるなら、それ以上の速度が求められます。例えば、新幹線移動中に高画質の映画を途切れることなく見たいのであれば、少なくとも50Mbps以上の安定した速度が望ましいでしょう。
各地での実際体験
私は仕事柄、さまざまな国でeSIMをテストしていますが、通信速度はやはり場所によって大きく異なります。東京の渋谷スクランブル交差点のような混雑地域では、キャリアアグリゲーションが最大限に機能し、ドコモの5Gで下り500Mbpsを超えることもあります。一方で、地方の温泉地ではLTE Band 8 (900MHz) のような低周波数帯がメインとなり、下り20-50Mbps程度になることもあります。
海外でも同様で、例えばロンドンの中心部、特にオックスフォード・ストリートのような商業エリアでは、O2やVodafone UKのBand 3 (1800MHz) やBand 7 (2600MHz) を使ったLTE-Advancedで下り100Mbps超えは珍しくありません。しかし、地下鉄のトンネル内では圏外になることも多く、駅構内のWi-Fiに頼る場面も出てきます。
重要なのは、特定の地域でのキャリアの通信品質を事前にリサーチすることです。CellesimのようなeSIMプロバイダは、複数の現地キャリアと提携していることが多いため、最も安定したネットワークを選んで提供している傾向があります。これにより、韓国のeSIMなど、特定の国に最適化されたプランを選べば、より快適な通信体験が期待できます。
よくある質問
iPhoneのデュアルSIMはどのモデルから対応していますか?
iPhone XS、iPhone XS Max、iPhone XR以降のモデルがデュアルSIM(物理SIMとeSIM)に対応しています。ただし、米国で販売されているiPhone 14以降のモデルは物理SIMスロットがなく、eSIMのみのデュアルSIM対応となっています。
海外eSIMを利用中に、日本の電話番号に電話がかかってきた場合、どうなりますか?
日本のSIMカードを「デフォルトの音声回線」に設定していれば、海外eSIMでデータ通信中であっても、日本の電話番号に着信します。通話料は日本のキャリアの国際ローミング料金が適用されるため、着信自体は無料ですが、発信すると費用が発生します。
eSIMのAPN設定は自動で行われますか?手動での設定が必要なのはどんな時ですか?
ほとんどのeSIMはAPN設定が自動で行われます。しかし、データ通信ができない、またはプロバイダから手動設定を指示された場合など、稀に手動での設定が必要になることがあります。その際は、eSIMプロバイダから提供されるAPN情報を「設定」>「モバイル通信」>「モバイルデータ通信ネットワーク」で入力します。
海外eSIMのデータ容量を使い切ってしまったらどうなりますか?
データ容量を使い切った場合、通信速度が極端に制限されるか、通信が停止します。多くの場合、プロバイダのウェブサイトやアプリから追加データを購入(リチャージ)できます。事前にデータ残量を定期的に確認し、必要に応じて早めのチャージを検討してください。
VoLTEやVoWiFiは海外eSIMでも利用できますか?
VoLTEやVoWiFiの利用可否は、eSIMプロバイダと現地のキャリアの対応状況に依存します。一部のMVNO eSIMではVoLTEがサポートされていない場合があり、その場合は通話品質が低下したり、通話できなかったりすることがあります。購入前にプロバイダに確認することをお勧めします。
iPhoneでデュアルSIMを使用すると、バッテリー消費は増えますか?
2つのSIM(物理SIMとeSIM)が同時にアクティブな状態になるため、シングルSIM運用と比較してバッテリー消費は若干増える可能性があります。特に、電波状況が悪い場所で両方のSIMが常に電波を探しているような状況では、消費量が増えやすくなります。



